21回研究会

第21回パーソン・センタード作業療法研究会(多職種対象)

2013年7月28日(日) 13:00~16:00

特養ホーム 練馬高松園 (練馬区高松2-9-3)

内 容:認知症をもつ方への活動支援―プール活動レベルの使い方―


猛暑の中,10名の方に参加頂いた.職種としては,作業療法士7名,介護職1名,看護職1名,社会福祉士1名で,これまで作業療法士を中心に活動してきたため,他職種の参加が少ない結果となり,今後,PRが課題と考えられた.


会ではイムス板橋リハ病院の小川さんより,認知症をもつ方への活動の支援とプール・アクティビティ・レベル(PAL)についてお話し頂いた.

まず最初に,「人にとって意味のある活動(=作業)は不可欠なもの」であり,認知症をもつ方は,活動を選べない・行えない・持てない・・・・という状態であること.

活動というと何かレク的なものを思い浮かべがちだが,作業は大きく3つに分類できる.

日常生活活動(ADL)

生産的活動家事(仕事,趣味)

趣味的活動(レジャー)

これらの活動に私たちは日々たずさわりながら生活していて,その人の好みで構成されている.


認知症は記憶障害が大きくクローズアップされているが,作業遂行障害も大きな問題であり,作業療法では,作業疎外,作業剥奪,作業不均衡,作業の周縁化と,その人が本来満たされるべき作業をする権利が阻害されている状態と捉えている(「続・作業療法の視点-作業を通しての健康と公正」).

自分で作業活動を選び,自分の脳力を発揮できると,パーソン・センタード・ケアの心理的ニーズを満たすことができるが,認知症の方は,主体的に活動を持つことが難しくなる.すなわち,「活動に関わる能力の低下」,「選択の困難」,「開始の困難」,「継続の困難」,「終了の困難」がある.これらの事に対する支援が必要である.

作業の導入に当たっては,「本人から聞く」ことが大切である.それが難しい場合は,その決定を支援するためのソフトADOC(Aid for Decision-making in Occupation Choice:エードック)の導入(MMSE8点でも利用可能)や絵カード評価(MMSE10点でも可)などの使用も考えた方がいい.また,MMSE5点くらいでも,好き・嫌いは言える.こちらが聞かずに提供するのは避けること.

活動提供のポイントは,その人を知る,活動を知る,やってみる,反応をみる このような中で,その人がやりたい,やれる作業を提供していく必要がある.

また,活動の意味についても考えるべきで,・他者貢献すること・所属意識や他者とのつながりの経験

・楽しさ・喜びを経験する ・リラックスする → 休めない人がいるので休むことは重要・習得感や達成感を体験することなどは重要である.やらせればいいというわけではないと強調された.


そして,活動をどう提供するかのツールPALについて説明した.PALは活動レベルを判定するツールであるが,能力を分けることだけが重要でなく,その人の背景を考えることが大切であると,ケースを交えて説明された.


< 質疑応答 >

・作業療法士は患者さんに何か作業を提供しようということは多いが,お風呂などのことも考えて欲しい. → トイレの声掛け,お風呂の介助の方法など

エピソードとして,石鹸の泡で身体を洗うのが好きな方がいて,その方が自分で泡を作ることが出来なかった.その泡を作ってあげると,とても楽しそうに自発的に体を洗った.その人のこだわりに寄り添うことが効率的になる!!と思った一場面だった.

・病院の中では職種間に壁があって,例えば,看護職とOTは互いに話しづらかったり,お互いに気を遣っている.しかし,看護師はOTに食事介助の時の助言を欲しいとも思っている.シーティングの知識などあるので,もっと病棟に活かして欲しい.


多職種での勉強会ならではの意見交換がなされました.本当に有難うございました.